担当している介護予防体操指導教室ではグループワークを実施しています。
(今の時期はお互いの距離を充分にとって、大声での会話にならないように
お互い接触する事の無いように対策を行ったうえで)
月1回、一か月の振り返りを行います。
参加者各々が
①この一か月間にフレイル予防のために意識したことや取り組めたこと
②やろうと思っていたが、出来なかった事
③これからの1か月間でフレイル予防のために取り組めそうなこと
について、まず各自考えて(必要な方は用紙に記入)もらいます。
そして、それをお互い発表(シェア)しあいます。
発表中、グループの周りの方は話を途中で割り込まずに最後まで【うん、うん】と聞きます。
発表後、周りの方が
『そやね~~』『私も同じようなことがあって、○○だったわ』と感想を言います。
このワークで各自考えてもらう前に、
『ご自身にとって出来そうなことで良いですからね』
『運動以外の事、例えば食事やお出かけすることなども意識すればフレイル予防になりますからね』
とお伝えしたうえでこのワークを進めます。
老年期の発達心理学で
【SOC】(補償を伴う選択的最適化)モデルがあります
【S】…Selection(選択)
自らの持てる資源を認識し、それをどこに振り向けるか(目標)を選択する事
【O】…Optimization(最適化)
目標に対して資源配分の調整を行い、努力を継続する事
【C】…Compensation(補償)
今までのやり方がうまくいかなくなった時に、新しいやり方を工夫する事
老年期は心身の様々な機能の【喪失】が伴います。
その中で、人生をよりよく生きる(サクセスフル・エイジング)為にこのSOCモデルが有効的に用いられています。
私は、ご参加の皆様が今の自分に出来そうなこと(=資源)から各自で目標を決める(=選択)していただくように、
このグループワークの進行を心掛けています。
そして、目標がより具体的に行えるように、また皆様の生活環境に沿って実践できるように、
皆様から『私、○○という目標だったけど、主人の世話で時間が作れなさそうなの?』などと相談されたときに
代替法を提案するようにしています。(=最適化・補償)
更に、自己や自分の人生に関する肯定的な感情は成人期から老人期にかけては上昇、
もしくは維持されることが示されています。(唐沢 2012:松岡 2006:高橋・波多野 1990)
自尊感情も40代後半から上昇し、60代でピークを迎えます(Robins et ai..2002)
自分を振り返り、それを自身はもちろん周りも肯定的に受けとめる事がサクセスフル・エイジングに必要です。
それをグループワークで振り返りという形で行い、お互いを尊重し合って、自尊感情を高めて各々が出来る事に取り組んでいただく‥
そう導ければと考えています。
このグループワークの最中に、ある参加者が
『そう、私も最初は家で体操できるかどうか不安だったの、でも家でテレビ見ながらの体操ならできるからそれだけ頑張ったわ
そうしたら、前よりも長く歩けるようになったの』
と、ある参加者の発表を受け止めて自身のSOCに基づいた取り組みを発表されました。
すると、そのグループの皆さんが【うん、うん】と頷いて、とても前向きにその後のシェアとトークに取り組まれていました。
ご参加の皆様が日々の生活で幸福感や肯定感を保ち、社会参加・繋がりの意欲を高めていただきたいですね。
参考 (新訂 発達心理学概論 放送大学教育振興会出版)より