ある介護予防教室に、見学の方が来られました。
その方は胸椎圧迫骨折の罹患歴があり、今も診察&リハビリに通われています。
(教室参加は病院の勧めだそうです)

来場時は体幹部(肋骨周り)にベルト状のコルセットを着用されていました。
見学でしたが、時々ご自身で出来そうだ…と判断されたものをご一緒にされていました。

しかし、動作によっては腰部をかばうようなしぐさをされることが有り、その時表情が険しくなっていたのでお声掛けをして、
動かずに見るだけにしていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのような状況なので、参加をためらわれる(保留)だろう、と思っていました。

教室では現参加者の今までの振り返りをグループワークで行っていました。
参加者間で共有します。
ある方が『今まで、リハビリでやった運動がきつかったので、この教室の運動できるかどうか最初は不安でした。でも自分でもできる内容だったので自宅でも宿題として頑張ったら、以前よりも体が楽に動かせるようになりました。娘が最近明るくなったね、と言ってくれます』と仰いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ご見学の方がメモを取りながら熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

教室終了後にお声掛けしました。
「教室ご見学されていかがでしたか?」
『参加してみたいです!私のできる範囲内で体操して頑張ります』と参加の意思を固められたようです。

【自己効力感】の源の一つ〈代理経験〉
自己効力感とはその行動が出来るかどうかの自信を指します。

例えば、一階分の移動をエスカレーターやエレベーターを使わずに階段を利用する、という行動が出来るかどうか。
筋力がある方や、既に習慣づいている方は難なくできます。
一方で筋力が低下している方、疲れている方、面倒くさいと思われる方にとってはハードルが高いです。
前者は自己効力感が高い、後者は低いと言えます。

そして、自己効力感だけでなく【結果予期】も備わっていることがその行動を遂行・達成できるうえで重要です。

結果予期とはその行動を行う事で結果に結びつくかどうかの期待の高さを指します。
階段を利用する事で活動量(消費カロリー)が増える。
階段を上るという運動が太ももの筋力強化につながる。(低体力者は階段を上るだけでも筋力強化としての運動に相当します)
これらから、健康になる。
この期待値が高いことも必要です。

(階段くらいで…なんて思っている方は結果予期が備わっていないと言えます、だからなのか分かりませんが最近階段の床に【この階段上ると○○カロリー消費】なんて書かれていますね…(^_^;))

【自己効力感】と【結果予期】の両方が高いことで人は行動をやり遂げることが出来る、というのが心理学でいうバンデューラの社会的学習理論です。

 

 

 

 

 

自己効力感の源となるものは4つあります。【達成経験】【代理経験】【言語的説得】【生理的・感情的状態】
そのうち【代理経験】というのは、他者が課題を達成していく経験を観察する事で自己効力感が上がるという事です。
(あの人にできるのであれば自分にもできるのではないか…と感じる事)
観察する他者は自身と似ている特徴(年齢、能力、意欲、など)が多い方が良いとされます。

そこで、介護予防教室の状況を振り返ります。
見学の方にとって、現参加者が仰った振り返りの感想は
『あの方もリハビリされていたんだ、リハビリってきついよね~~。でも教室参加して自分で自宅でも体操できるようになった、明るくなったと言っている。私と同じくらいの年齢だよね。だったら私も頑張って出来るかもしれない…』
と代理経験により自己効力感が高まったと言えそうです。

更に、この教室を見学したいと思った動機を聞く中で、最近この町に引っ越してきた、まだこの町の事あまり知らないとおっしゃっていました。私は
「ご自身の足でこの町ぶらぶら散策出来るようになれたらいいですね~」とお話しすると
『はい!長く歩ける体力つけて、色んなところ歩いていきたいです』と意欲を高められました。
これは【結果予期】になります。

 

 

 

 

 

 

 

ご見学の方は【自己効力感】と【結果予期】を持つことで、教室参加への意欲が上がったのでないかと考えます。
(自己効力感の源となるものの残り3つ【達成経験】【言語的説得】【生理的・感情的状態】はまた機会があれば載せたいと思います)

心理学として、健康への行動を考えると、普段行っている運動指導がより興味深く感じられますし、意図して(戦略的に)この考えを指導に盛り込むことでお客様の意欲と結果を引き出すことが出来そうですね。